WATARU NISHI
デザインとは、
変化をつくり出すこと。
デザインの中でも、西さんの得意分野はUIですよね?
西
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その話、振られる度にちょっと微妙な気分になるんです(苦笑)。大学の時、相互作用を起こす公共デザインを研究していて、関わりの深いUI・UXを意識することが多かったのは確かです。ただ、一般的にWebサイトなどでUIと言われる分野よりかなり範囲が広いから、UI設計が得意と言えるのかどうか。
UIをいわゆる意匠という領域で考えると狭いものになる?
西
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そうですね。個人的には、そもそもデザインって、正しくなかったものを正しく整理するとか、バージョンアップするとか、変化を与えることだと思ってて。そういう意味では、視覚の設計というのもそこに含まれるとは思います。でも人の行動を変えたり、受け止め方をコントロールするには、見た目をキレイにすれば良いだけじゃなく、もっと深く掘り下げていかなきゃできないわけじゃないですか。
そういう意味で言うと、デザインってデザイナーだけの仕事ではなく、ディレクターやコーダーなども含めて全員でやるものだということですね。
西
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Webの場合は効果が数字に出るので、こうするとこうなるんだという反応が見えるのは面白いと思っています。AEMでは、プロデューサーが戦略を練り、ディレクターがある程度導線を設計して、デザイナーがどうすれば企画の意図通りに動いてもらえるかを考える。ビジュアル設計の部分は、いわゆるインターフェースの領域ではありますね。
Webサイトの
アクセス数が10倍に。
これまでの経験で「変化」の実感があった仕事は?
西
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例えば、以前、k&iソリューションズ株式会社様の電子契約サービスのサイトを制作しました。電子契約が今ほど浸透する前で、私もどういうサービスかまだ分からない状態だったんですね。目に見える商品があるわけではないので、契約とか法律とかのサービスをどう絵面にすりゃいいんだって悩みながら制作しました。
で、新サイトをリリースした後、AEMが関わる前にあった簡易的なサイトと比較して、アクセスが10倍になったんです。
すごい効果じゃないですか!
西
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SEOを意識するきっかけになりました。ただサイト構造重視で見た目を比較的シンプルにしているので、アクセス数向上がデザインの効果だという確信は持てていないんですよね。もちろん、結果的にはつながっているんだと思うけど…。
研究者気質(笑)。西さんは、自分が動かしたという確信を持てるところまでやりたいんですね?
西
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少なくともそういう狙いを持っていたいとは思っています。
キレイなビジュアルを作ることではなくて、それによってどういう変化が起きたとか、そもそも効果が出るのかどうかが私の行動原理になっているので、目的やターゲットが明確な仕事は楽しいです。
制限があるからこそ、
デザインは面白い。
デザインの仕事は面白いですか?
西
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面白いです。
例えば、Webって制限がないようで、実は結構ある。制限というと面白くないイメージを持たれがちですけど、ある程度制限がないと取っ散らかるだけなので、大事なんです。
紙って媒体が決まるとスケールが決まるんですよね。サイズの制限を自分で考える必要はないんです。でもWebは、何にコストや時間を費やすか、自分で適切な制限をつくって、表現していける媒体かなって思ってます。何ができるかを考えて、その上で表現を考えるのが、結構面白いですね。
AEMに入社する前は、紙のデザインを経験されていたんですよね?
西
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やったことがあるという程度です。前職ではデザインしているっていう感じはなかったですね。それこそスペースの中に要素をどう入れていくかっていう、パズルに過ぎなかった。
AEMではじめてカタログの仕事をした時に、ディレクションの意図を汲んで限られた紙面に落とし込む難しさとか、金属の色味を印刷で再現する難しさとか、紙のデザインの制限を感じてすごく考えました。前職と同じようでいて、結構違うことをやってたんだなっていう感覚があります。
入社してから、他にもターニングポイントになったプロジェクトはありましたか?
西
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幼児教育をされている株式会社ジャクパ様のWebサイトです。コーポレートサイトと採用サイト、全部で50ページ以上作りました。で、お客様とお付き合いする期間も長くなったんです。撮影なんかで何度もご訪問するうちに、ご担当者や会社の人となりが見えてきます。それまでもお客様のことを考えてデザインしてはいるんですけれど、実際にお客様やエンドユーザーになる園関係者・保護者の方々にお会いしてみて、だったらこうしたほうがいいっていうのが、リアルになった感覚がありました。撮影の狙いも、お客様の強みをもっと表現できる動的なイメージに変えました。顧客理解度が高まって、その意義を感じた案件でした。
最終的なアウトプットを作る役割でいたいと思っています
これまでの話をお聞きして、将来的によりお客様に近い立ち位置を目指しているのではないかと感じたのですが?
西
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んー…。デザイナーって、実際世に出す最終的なアウトプットをする仕事で、そこが重要だと思ってるんです。私は結局、何かしらの要因によって影響が出るのかどうか、どう動くのかが見たいわけで、それには要因の設計を自分でする必要がある。そういう観点でいくとデザイナーが合っていると思うんです。今後もそこを切り離すことはないと思います。
なるほど。職場としては、AEMってどんな会社ですか?
西
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ガチガチに決まったルールがあまりなくて、仕事を任されたらある程度放任してもらえるのがありがたいです。社内は全員がお互いを見つつ、全体も俯瞰している感じ。制作で話をしていてピリついた空気にならないのが良いですね。
自分の領域や余白が持てる雰囲気が西さんに合ってるんですね。ありがとうございました。